片道書簡のラブレター

大切な人を思い浮かべながら手紙を書きます。

記憶のかけら

忘れ去られた経験が記憶の海の底からフーッと浮上してくることがある。

なぜ些細な思い出とも言えないような何気ない過去の断片が思い出されるのだろうと自分自身不思議に思うことがある。

例えば子供の頃来ていた服のこと、模様や素材やチクチクしていた着心地などそんなことや、近所で飼っている犬がその前を通るといつもうるさく吠えていたこととか、幼児の頃遊んでいた玩具を動かしている自分とか、そんな古い古い日常の断面。

私が幼稚園の頃のある日、私たち家族が住んでいたアパートのすぐ隣のコンクリート塀に中年の男性が半日ほどズーッと座っていた。

ただそれだけの事だけれど、静かな住宅街でそんな風景は違和感を感じた。

若い母は怖がって近所の知り合いに相談したか、警察に電話したか、忘れたけれど何事もなくその男性は立ち去った。

多分そんなこと亡き母も忘れてしまっているようなこと、そんなことあったかしら?と言うだろう。

あの人はあれからどうしたろうか?

私の記憶に残ったほんの一瞬の繋がりだけの人のことを思い出した。

 

 

何度も語る思い出とは自分でストーリーを盛ってしまう事がある。

記憶の断片はスナップ写真のように起承転結のストーリーはない。ピウプより。