小学4年生の頃の同級生でお魚屋さんの子がいた。
当時は鮮魚店も街の商店街にいくつもあり、その子のお店は商店街の中でも大きなお店で繁盛していた。
ご両親はいつも店頭に立って忙しく働いていらした。
学校のお母さんについて作文を書く課題でその子の秀逸な作文は今も心に覚えている。
一日中働くお母さんをよく観察していて思いやりにあふれていた。
お魚屋さんは寒い冬も暑い夏もいつも氷水に触れていなければならないし、次々注文をするお客さんをさばいていかなければならない。
ケーキ屋さんのように非日常な夢の食べ物を売る仕事ではないけれど、あの作文は彼女の心に映った美しい菩薩像のようなお母さんのことなのだ。
鮮魚店はだんだん減っていって、あのお魚屋さんもう随分昔に無くなってしまった。
あの子もきっと作文のお母さんにそっくりなお母さんになっていることだろう。
商店街のはずれに魚屋さんを久しぶりに見つけた。お魚の値段を見ながら今晩は何にしようか悩んでいた母を思い出した。ピウプより。