子供の頃あんなにバカにしていた食べ物がおいしく感じると、晩年の母がよく言っていたものだ。
確かに私も大人になって和食の美味しさや奥深さを感じるようになってきた。
子供の頃は洋食や中華料理など濃厚な味付けでボリュームのあるものを好んだ。
お煮つけ、お椀、お造りや焼き魚など一般的な和食は物足りなくて、進んで食べたいと思うことはなかった。
私が子供の頃のお手伝いはカツオ節を削ること。
四角い引き出し付きの木の箱にカンナがついていて、そこで削り節を作る。
軽やかに薄くカールした削り節は出来なくてポソポソっとした削り節だけれど一本の鰹節から削りたての鰹節はおいしい。
こんな肌寒い日にはよく湯どうふをつくったものだ。
昆布や干しシイタケのあっさりしたお出しは風味を高めるもの。
粉末のお出しはお手軽だけれどこの本当のお出汁にはかなわない。
今やこのシンプルにして手の込んだ料理、そしてレシピ通りというより素材の鮮度や旬というそもそもの美味しさをどうやって引きたてるのかという繊細さにこの年にしてようやく気づき始めた。
今日は干しシイタケと昆布でけんちん汁をつくる。里芋と大根と人参と鶏肉を少し入れてコックリと。おもちを入れてもおいしい。ピウプより。