イ・チャンドン監督のドキュメンタリー、イ・チャンドン アイロニーの芸術を観た。
フランスのアラン・マザール監督とイ・チャンドン監督の共同制作。
監督自身の語りで、今までの全ての作品を最新作からそして最後は監督の少年時代まで遡って進んでいく。
監督は静かで穏やかな語りで、どうやって映画を作り始めるのかどうやって物語を作るのかを丁寧に説明してくれる。
一つのイメージ、一つの映像シーンを思いつくところから物語を作っていくというのも興味深い。
絵画的な物語の始まりは言葉で表現しきれない感性を感じる。
イ・チャンドン監督の作品の中には韓国歴史特有の悲しみや苦しみが詰まっているのだけれど、もしかしたら自分もそうだったかもかも知れない、そうなるかも知れないと共感させる臨場感があるので胸が苦しくなる。
そしていつも絶望的な状況の中にホンの微かな救済が見えそうで見えない。
もし私が犯罪被害者であったら?
もし私が犯罪加害者の家族であったら?
もし私の体が不自由であったら?
もし私が独裁政権の国民だったら?
不幸のなかにある一瞬の幸福の煌めきの美しさを作る。
イ・チャンドン監督は小説家から映画監督になったという。物語作りのすきな子供だったらしい。ピウプより。