片道書簡のラブレター

大切な人を思い浮かべながら手紙を書きます。

お琴のお師匠さん

小学三年生ぐらいの頃だったか、学校の帰り道の途中お琴の教室があって、琴の音を聞きながら帰った。シンプルで綺麗な音に興味をそそられてお琴を習わせてもらえるよう母にお願いした。週に1回お稽古をつけてもらうことにした。近所のお友達のみっちゃんも一緒に習いたいというので二人で通った。

お師匠さんはいつも着物をお召しになって微笑みを絶やさない、優しい方だった。子供でお稽古を付けてもらうのは私たちだけだったせいか、とても可愛がってくれて、私たちの来るのをとても喜んでいらした。私の母ぐらいの年齢だったろうか?独身の方だった。

木造の一軒家の2階が稽古部屋で、お琴が3面(お琴の数え方)並んでいたように思う。私の前にお稽古をつけてもらっているお姉さんを待ちながら、お姉さんのレッスンを聞きながら、お稽古の部屋の片隅にあるガラスのケースに入った小物を見とれていた。小物は女の子が好きそうな小さなお人形や、ちりめん細工や、くす玉など綺麗な飾りがビッシリキレイに並べられていた。ある日お師匠さんが綺麗な折り紙細工を作ってくださり、とても嬉しかったのを覚えている。多分私がガラスケースの小物をうらやましそうに見ていたのを察していらしたのだろう。そんな思いやりのある優しい先生だった。そのまま続けることができず中学生になって止めてしまってから先生とも交流もなくなってしまった。今はその場所には鉄筋のビルが建ってお琴の教室はなくなってしまった。

ふと優しいお師匠さんのことを思い出す。足がしびれてしまった感覚、お稽古が終わったらお座布団を裏返したこと、そんなことも同時に。ピウプより。