片道書簡のラブレター

大切な人を思い浮かべながら手紙を書きます。

オッサンになった、あい君へ

あの時は言えなかったこと、出来なかった事を今なら話せたり

謝れたりっていう友達いない?

 

小学校4年生頃あい君は向かいのアパートにひょっこり越してきて

同じクラスになった。明るくて気さくだけど喧嘩っ早く、短気な

問題児だったので、面倒くさい男子,関わりたくないと思っていた。

 

あい君のおかあさんは早朝アパートの外で長い髪を入念にとかしていた。

おとなの話によるとあい君の2番目のお母さんだったらしい。

 

ある雨の日家に帰る途中、あい君が片足ケンケンしながらアパート

に向かっている。よく見ると足の裏から血が滴っている。

いつも喧嘩してガラス割ったり流血の姿を見ているので、私は

またやったの?どしたの?と聞くと釘を踏んだと言う。

そのまま雨に濡れながらケンケンで帰るあい君をみて私はどうして

傘にいれて肩を貸してあげなかったのだろうか。

 

帰ったら彼はあのお母さんに何と言われるのだろうという意地悪で

欺瞞な想像を突き抜ける勇気が私には足りなかった。

もし私がそうしていれば彼も勇気が湧いてきただろう。

おせっかいな奴と思われても一時の勇気のほうが肝心要だ。

 

それからそんなに長いことないある日あい君の両親は居なくなった。

あい君だけ置いてけぼりにして。

あい君のその後は担任の先生から語られただけでお別れ会なども

できないまま終わった。

あい君ごめんね。君はあの雨の日のことなんてもう忘れてるかもね。

でも子供時代の私にとっては自分自身の心と他者の心を深く考える

場面になった。

 

もっと色々話せばよかったのだろうけど、あい君も誰かに何をどう

話したらよいのか解らなかったんでしょ?

あの時遠いところまであい君を探しに行って心配してくれた担任の先生

は去年お亡くなりになった。

あの後も先生はいつもあい君を心に留めていたよ。

 

あれから君はきっともっと色とりどりな人生をすごし、今は喧嘩もせず

平和に穏やかにたくましく生きているオッサンだと想像している。

風のうわさでも伝わればいいな。ピウプより