母は古いガス釜の炊飯器でお米を炊いていた。
水の量には物凄くこだわりがあり、
微妙な水の量を目で確認していた。
母のごはんはとてもおいしかった。
目利きの乾物屋さんので買ってきた塩鮭と
大森の海苔屋さんで買っている海苔で作る
おにぎりは、今まで食べたおにぎりの中で
最上位だ。それときゅうりとカブの糠漬け。
あの古いガス釜はとっくにどこかへ無くなって
しまい、母も逝ってしまった。
あの時は毎日でも食べることのできたごはんは
今はもう食べられないのだ。
おばあちゃんの家に行くと、春には近くの
田んぼの土手を歩いて野生のヨモギを摘みに
いった。摘んできたヨモギでおばあちゃんが
すぐに草餅を作ってくれた。
主張するくらい独特な天然の色合い。
シンプルにきな粉とお砂糖で頂く。
おばあちゃんも随分昔にあの世に行ってしまい、
ヨモギ摘んだ田んぼの土手は住宅街になった。
あの時にたらふく食べたヨモギ餅も今はもう絵
にかいた餅なった。
あの時の味は私の記憶だけの存在。
永ちゃん、矢沢さんが成り上がりの自伝で貧乏
だったころ食べたアンパンやおばあちゃんが作って
くれた茶碗蒸しは二度と食べられないって
言ってたっけ。
それがよくわかるようになったよ。ピウプより。