少女漫画の王道テーマの一つはバレエ漫画だった。
谷ゆき子先生といえばバレエ漫画、小学生ぐらいの子供向け漫画をよく読んでいた。
バレエ漫画は女の子の好きな、トウシューズとかフリルとリボンとかチュチュとか白鳥の湖とか、絵になるロマンティックなキラキラアイテム満載。
お話の内容は韓ドラの定番みたいな、不治の病、貧困、記憶喪失と、バレエなんかやってる場合じゃないような流れでお話は続く。
谷ゆきこ先生が私の小学校近くにお住まいなのを同級生が見つけ出し、ある日何人かでサインを頂きに厚かましくも突然お訪ねすることにした。
当時は珍しい15階建てのマンションで何階にお住まいだったか覚えてはいないけれどエレベータで小さなスケッチブックをもってドキドキしながら向かっていったのを覚えている。
先生は優しくドア口に立って確か、数日後にまたいらっしゃい、ということになった。
約束の日に先生は子供たちにスケッチブックを返してくれて、何か素敵な文房具も頂いたように思う。
スケッチブックには丁寧に描かれた女の子の水彩画があった。
不躾な小童どもにこんなに素敵な夢を与えてくれるなんて。
水彩画は何年か前に大切にして下さる方に譲った。大切な記憶と思いだけがフレ
ームに飾ってある。ピウプより。