昔の市井の日本人はお金はなくても無い無い尽くしのなか有り合わせの生活でも結構楽しく愉快にくらしていたのだな、と感じさせられる、太宰治の短編を読んだ。
貧の意地というタイトルの作品で江戸時代の駄目人間を書いている。
その日暮らしのお人よし浪人なのだけれど、その主人公のダメっぷりが崇高すぎて希少価値のある存在感なのだ。
親族にとっては呆れられた存在だけれど女房様はけなげに支えている。
お金はないし、仕事のめどもつかず、まさに武士は食わねど高楊枝で滑稽なほどのギャグなプライドがこの物語の面白さ。
浪人同士がまるで暗黒舞踊のようないでたちで酒盛りをする場面は太宰さんの骨頂描写が冴えわたり、真剣に生きていてもこんなに滑稽でのんびりと心暖かく、愉快でしっとりした情緒なのだ。
太宰さんのこんな作品は噺家が話してみたら愉快なライブになるのではないかと思えるような短編小説だった。
このところ一つのテーマでいろいろな作家の書いたアソート短編集を読んでいる。今回はお金の話がテーマ。 ピウプより。