片道書簡のラブレター

大切な人を思い浮かべながら手紙を書きます。

美術作品の領域

人間には恐怖心という本能があり、慣れない場所・初めての場所では微細な緊張感をもってしまう。そんな直観的な本能を強烈に刺激するような美術作品を見たのは、初めての体験でもあり、現代のタイミングで評価されるべき芸術作品だったのだろう。アンセルム・キーファーというドイツ人作家の回顧展。ニューヨークの近代美術館での展示であったと思う。美術という観念を打ち破るような恐怖の臨場感を体験する。美しいものではなく、むしろ目を背けたい、そこに居続けたくない場所をインスタレーションで表現する。美しいものだけを鑑賞したいという人や不愉快な感動は受け付けないという人は鑑賞をお勧め出来ない。人間の誰でもが持つ罪のように人間の嫌な面、考えたくないことに凝視させる作品。

私が観ていて恐ろしく感じたことは、身の毛のよだつような事が起こるのではないだろうかと直感的に感じる場所、酷く痛めつけられた人の念・記憶が残っているような建物を描いた巨大な作品群。画材・材料の重量感、暗い質感、不気味に胸に伸し掛かり迫ってくるようだ。戦争体験のない私だが、戦争で破壊された生活や文化や人間関係を感じさせる。美術表現というのはどこまでも果てしなく広がっている。芸術作品の感動とは美しかったり静かで紳士淑女の平和秩序だけでなく、恐怖と暴力や無秩序の感動で暗く静かに訴えてくるものがある。

このような作品を評価でき新しい解釈のリテラシーを持てる一般的な人たちがいるのが、ニューヨークらしいところ。ピウプより。