片道書簡のラブレター

大切な人を思い浮かべながら手紙を書きます。

思い出の父と一献

冷蔵庫の奥に亡き母の作った梅酒がある。もう数十年も前の梅酒。父の飲んだニッカウイスキーの空き瓶に半分くらい入っている。昨日の夜、小さなグラスでワンショット。美味しい。でもここまでにしてあとは大切にとっておく。なぜってもう母のお酒は手に入らないから。仕上がったばかりの頃は甘味がほとんどなく氷砂糖は僅かの量でドライな梅酒だった。月日で味が丸く、熟された味がでてきたのだろうか?私は梅酒など作ったこともない。

親の死を見届けるということは初めて死の理解に近づくものだと分かった。介護は死までの長い低空飛行が続く。近づいてくる死を共に待ちながら、自分を親に投影しながら、考える。残りの時間は少ないが、今までの彼らの来し方を一緒に確認しながら過ごした。両親から受け継いだ形や物にならないものが、私の細胞の中に、習慣のなかに蓄積されている。父を思い浮かべ、”順繰りだ”という父の言葉を思い出しながら、父と一献。

亡き人たちは過去を行ったり来たりしている。私の中で。ピウプより。