昔昔、父や母に絵本を読んでもらうのが好きだった。
父や母自身の子供の頃の話も好きで、同じ話を繰り返し
聞いても飽きなかったものだ。
母の幼なじみナミちゃんはお母さんが早く亡くなってしまい
おばあちゃんと暮らしていたそうだ。
おばあちゃんは働いていたので、ナミちゃんが御三どんを
しなければならなかったそう。
ある日母がナミちゃんの家に遊びに行くとナミちゃんが、竈に
火をいれてごはんを炊いている。
お赤飯より真っ赤なご飯が炊けており、あまりに綺麗でおいしそうなので
味見をさせてもらうと、食べたことのない、美味しいとは言えない
コーリャンという雑穀であった。
今でこそ健康食品で雑穀はブームであるけれど、
食糧難であった時代は米ではなく雑穀100%で食べていたという。
このお話の興味深いところは、
小学校低学年が竈に火をいれてごはんを炊けること、
おばあちゃんとふたりで暮らしていること。
真っ赤に美しいコーリャンという穀類を焚いていること。
そしてそれはお米の代用品で美味しくないものであること。
母の時代はそんな子供は珍しくなかったのかもしれないが、
多分彼女の思い出のなかでこの場面は印象深いものであったのだろう。
母の晩年、彼女のはっきりとした記憶は昔の思い出だけだったので、
今度は私が彼女の思い出を話してあげた。
とても喜んで、ナミちゃんを懐かしく思い出していた母。
そんな母の思い出が、私の思い出になっていった。
思い出を共有できるのは素敵よ。
またあなたと、新しい思い出が出来ることを楽しみにして。
ピウプより。